最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)392号 判決 1957年5月21日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人高野誠三の上告理由第一点について。
所論の如く原判決は一審判決と全く異る事実認定をしておるが、原判決挙示の各証拠によると原判決判示の事実を認定することができる。原判決は経験法則に反して事実を認定したとは認められない。論旨は理由がない。
同第二点について。
論旨は死因贈与も遺言の方式に関する規定に従うべきものと主張するが、民法五五四条の規定は、贈与者の死亡によつて効力を生ずべき贈与契約(いわゆる死因贈与契約)の効力については遺贈(単独行為)に関する規定に従うべきことを規定しただけで、その契約の方式についても遺言の方式に関する規定に従うべきことを定めたものではないと解すべきである。(同趣旨、大正一五年(オ)一〇三六号、同年一二月九日、大審院判決、集五巻八二九頁)論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高橋潔 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)